栗城さんを初めて見たのは、テレビだった。
常人には想像もつかない極寒の雪山で、自ら持てる力のすべてを大自然と対峙させている姿にもの凄い衝撃を受けた。
極限状態の中、理性や私欲を超越し、人間が生きぬくということはどういうことか、その生命力を嘘偽りなく剥き出しにして、泣いている姿が印象的だった。
正直、実際にお会いするまでは、若干ビビッていた。
何たって、大学で山岳部に入って現在までたったの6年。
7大陸の最高峰に挑戦し、既に3年という短い期間に6つの山を制覇してしまっている。
・2004年6月に北米最高峰マッキンリーの単独登頂成功。
・同年12月に南米最高峰アコンカグア単独登頂成功。
・2005年6月はヨーロッパ最高峰エルブルースほか3山の登頂成功。
・同年10月にはアフリカ最高峰キリマンジャロ登頂成功。
・2006年10月はオセアニア最高峰カルステンツ・ピラミッド登頂成功。
・2007年12月、南極大陸最高峰ビンソンマシフ登頂成功。
・2009年5月18日、単独無酸素ダウラギリ登頂に成功。
そして2009年9月、エベレスト無酸素単独登頂に挑戦するも、天候と体調の不良で7950m地点で断念。
後少しで頂上であっても下山する強い判断力。
これは、欲深い私どもには決して備わっていない精神力を持っていなければ出来ないこと。それだけに、とてもストイックで気難しい人ではないかと勘ぐっていた。
ところが…。会見場にやってきた“栗城さん”は、テレビで見た印象とは異なり、とても物腰の柔らかい、礼儀正しいイケメン細マッチョだった。
実際にお会いすると、決して大きくがっしりとした体つきではない。
強靱な精神力も凍りつき砕け散る極寒の山頂を制覇したてきた人を実際に目の当たりにしてお話をしているのに、なぜだか、暖かい日差しを浴びている感覚に陥ったのが不思議だ。
しかし、そんな“栗城さん”が大自然の中で見せてくれる信じられないほどの行動力と判断力。
そのエネルギーはいったいどこから来ているのか、何が切っ掛けだったのか…きっと幼少期にその原点があるのではないかと聞いてみると。
「父親の影響が大きいと思います。ボクが小学5年生の時、眼鏡屋だった父が“この町には温泉がない”と言い出し、一人で温泉を掘り出したんです。最初は町の人々も相手にしてなかったのですが、諦めることなく夢を追い求める父の姿に、一人、二人と手伝う人が現れ、夢を共有して明るく輝く仲間が少しずつ増えていき、そして5年後、本当に温泉が出たんです!衝撃的でした。今ではその場所に“あったかランド”という温泉施設ができてホテル経営までしています。それを目の当たりにしているので、夢を持ち続け、チャレンジしていくことの大事さをリアルに実感しているのです!」。
この話は“栗城さん”の著書で詳しく語られているので是非、読んで欲しいのだが…。
つまり、あの行動力、実行力は、父親譲りということのようだ。
言い換えるなら単に夢を思い描くだけなく、確固たる「自分を信じる強い力」を親子共にお持ちなのだ。
「ボクは正直、山登りしかできません。しかし、そんなボクが単独・無酸素登頂にチャレンジする姿を見てもらうことで、少しでも多くの人に“元気”になってもらいたいのです。日々の生活には、いろいろな失敗や悩み事も多いと思います。でも、それらはすべて成功や夢実現への足がかりと感じて欲しいのです!」
「この話は環境問題にも例えられると思うのですが…。世界7大陸を巡って改めて実感したのは、人間の住む地域はとても狭いエリアで、自然はとても大きいということ。二酸化炭素排出で温暖化は確かに高まっているかもしれませんが、地球はそんな柔じゃない! 人間たちが過ちを改め、正していけば、地球はあっという間に回復させる力があると思うのです。同じように、人間も何かを気づくことで、いずれは想い描く未来を実現できると確信しています」と語る。
今年の夏には再び単独・無酸素のエベレスト登頂への挑戦が始まる。
この記事を読んでくれている皆さんも“栗城さん”に夢と勇気を頂き、そして自らも“栗城さん”の夢が叶うよう応援をしよう!
文・インタビュー写真/黒須一彦


