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2010.01.15

ほんものの食べもの日記 第4回「おいしい葱ってどんな葱?」

スーパーに並ぶ真っ白でまっすぐな葱。輝くばかりの白さ! 収穫して外側の皮を一枚むくことで、この状態になります。

スーパーに並ぶ真っ白でまっすぐな葱。輝くばかりの白さ! 収穫して外側の皮を一枚むくことで、この状態になります。

鍋ものがおいしい季節ですね!

主役ではないけど、絶対に入っていて欲しい具のひとつが葱。
とろんととろけるような食感、葱本来の甘みは何度も霜にあたったこの時期ならではのもの。
なぜ葱がこんなにおいしくなるのでしょう。

その理由は「霜」。そして「糖度」にありました。

冬季、ハウスなどで栽培されていない露地野菜は、糖度を上げることで自分の体が凍るのを防ぎます。
細胞内部の糖度が上がれば、多少の凍結でも細胞が死ぬことはありません。
おひさまが上ってくれば、もとに戻ることができるのです。

12月も後半になると霜が降り始めますよね。
そのころ葱の畑に行くと、葱の表面に点々としずくがついているのを見かけることがあります。

ぱっと見ると朝露のようにも見えます。でもそうじゃないんです。
実は、これは葱から浸み出した糖分。
なめてみるとお砂糖のようにあま~いので、私にこれを教えてくれた農家は「葱蜜」と呼んでいました。

透明できれいな雨粒のような糖分のしずく。まさに葱から出てきた蜜って感じです。

透明できれいな雨粒のような糖分のしずく。まさに葱から出てきた蜜って感じです。

昼になるとこのしずくは葱に吸収されてしまい、見ることができなくなります。
そんな、あま~いしずくが出てきてしまうのですから、本体のネギは甘さは推して知るべし。
冬しか見られない面白い現象です。

ただ、どこの畑でも見られるわけではなく、私は有機栽培の葱畑でしか見たことがありません。
やっぱり有機の葱は違うってことなのでしょうね。

さて、葱と言えば昨今皮のむいてあるむき葱が一般的。
泥がついていなくて便利なので、ほとんどの方がこの葱を購入しているはず。
しかしこの葱、実はおいしさよりも合理性を追求したものなのです。

むき葱は、外側の泥がついている皮を一枚機械でむき、青い部分をカットして出荷されます。

機械を通すため、へろへろとした柔らかい葱だとうまく機械を通らず皮もむけません。
そこで品種改良され、皮がバリンと硬い、むくのに適した葱が登場したのです。

皮が硬いということは、食感がバリバリとしてあまりよくないということ。

外側の皮が硬くてゴワゴワする葱を食べた経験はありませんか。
全ての葱がそうではないと思いますが、居酒屋などで鍋を注文すると、時折出会います。
「あああ…はずれた…」とがっかりしてしまう瞬間です。

栽培方法もかなり関係していますが、やはりむき葱に適した品種というのが大きいようです。

ゴワゴワバリバリしない、加熱するととろんととろけるおいし~い葱。
むか~しから作られてきた、下仁田葱・松本一本葱・深谷葱などの在来品種がそれにあたります。

殿様葱とも呼ばれる下仁田葱。左はそのなかでもとくにおいしいとされる「だるま」と呼ばれるもの。可食部分が短いので割高になるのですが「食べてよかった!」と思うはず。ほとんどが地元消費で都心のスーパーに出ることはありません。

殿様葱とも呼ばれる下仁田葱。左はそのなかでもとくにおいしいとされる「だるま」と呼ばれるもの。可食部分が短いので割高になるのですが「食べてよかった!」と思うはず。ほとんどが地元消費で都心のスーパーに出ることはありません。

これらの葱は、柔らかかったり形状が変わっていたりで、皮をむくことができないため、主に泥つきで売られています。
昔は八百屋さんでも泥つきの葱をよく見かけました。

でも最近、スーパーではあまり泥つきの葱は見かけませんね。

台所で泥を落とすのが嫌だから。
皮をむくのが面倒だから。
売るときに土がつくと不潔だから。

そんな理由で、取扱が減ってしまったのでしょう。
真っ白なむき葱を店頭で見かけるたび、
本当においしい葱を食べたことのない人の方が多いのではと思わずにいられません。

ところで、関東近辺では、一般的な葱の種蒔きは9月(春にまくものもあります)。 

 秋にまかれた下仁田葱の11月のようす。うっすらと緑色に見えるほそ~い葱が、上の画像ほど太くなるなんて驚きです。土とおひさま、水の力だけ…作物の生育って不思議ですねえ。

 秋にまかれた下仁田葱の11月のようす。うっすらと緑色に見えるほそ~い葱が、上の画像ほど太くなるなんて驚きです。土とおひさま、水の力だけ…作物の生育って不思議ですねえ。

翌年の初夏に植えかえ、暑い夏の間何度も土寄せをした葱は、11月ごろから出荷が始まります。
栽培期間は約一年半。長いですね!

葱は農薬の散布回数が意外に多く、一般的には化学肥料主体の栽培がほとんど。
葱蜜は、こういう葱ではおそらく見ることができないでしょう。

できれば有機質肥料を使ったふかふかの土で育ち、
農薬もあまりまかずに栽培されたもの、そして泥つきで売ってるものを見つけて、
食べてみてくださいね。

いつもの葱との味の差に、驚くことうけあいです。

手島奈緒